水道管の分岐工事・取り出し工事は、この記事では「既設の給水管から分けて、新たに水を引く工事」として整理します。名古屋市では、お客さまが市指定給水装置工事事業者に申し込み、事業者が上下水道局へ申請して進める流れです。承諾が必要かどうか、どの書類を出すかは、工事の前に指定工事事業者と上下水道局へ確認することが最初の一歩になります。
- 引き込み工事との違いと、名古屋市の基準に出てくる「支管分岐」の意味
- 申請の流れ、依頼先、承諾や通知に関する様式
- 分岐後の管理の考え方と、費用が変わる要因・見積もりの確認点
この記事は、2026年10月時点で確認できた名古屋市上下水道局の公開情報の範囲でまとめています。他の自治体では取扱いが異なる場合があります。所有権や土地の使用権などの権利関係について、結論を示すものではありません。
分岐工事・取り出し工事とは?引き込み工事との違い
分岐工事・取り出し工事は、すでにある給水管から枝分かれさせて、別の建物や別の給水系統へ水を引く工事です。道路下の水道本管(配水管)から敷地へ水を引く引き込み工事とは、起点と工事の担当が異なります。
引き込み工事との違い
引き込み工事(本管から宅地まで)
名古屋市の案内では、道路に埋めてある水道本管(配水管)から宅地までの給水管引込工事は上下水道局が行います。工事費は、まず概算額を前納し、施工後に精算する仕組みです。
分岐工事・取り出し工事(既設の給水管から)
宅地内の給水装置工事は、市指定給水装置工事事業者が施工します。分岐する位置によっては上下水道局が施工する範囲が関わることもあるため、現地を見たうえで事業者と上下水道局に確認します。
引き込み工事の日数や使用開始までの流れは、水道引き込み工事にかかる日数は?申請から使用開始までの流れと注意点で整理しています。この記事では、分岐に絞って進め方・承諾・費用の確認点を扱います。
工事の種別と「支管分岐」という用語
名古屋市の給水工事施行基準(令和8年4月1日版)では、工事の種別や用語が次のように定められています。
| 用語 | 基準での意味 |
|---|---|
| 新設 | 新規に給水装置を設ける場合 |
| 改造 | 既設の給水装置の一部または全部を変更する工事(部分撤去も含む) |
| 増設 | 既設の給水装置で、既設部分の変更を伴わずに水栓を増やす工事 |
| 支管分岐 | 2以上の給水装置が道路取付管(公道下にある給水装置の部分)を共有する給水形態 |
分岐工事がどの種別にあたるか、「支管分岐」の形になるかは、建物の用途や配管の状況で変わります。「支管分岐」は名古屋市の基準で使われる用語で、一般的な会話の「分岐」と完全に同じ範囲とは限りません。読者自身が判断するのではなく、指定工事事業者が上下水道局の基準に照らして確認します。
分岐できるかを左右する条件|名古屋市の基準で確認できる範囲
既設の給水管から分けて別の給水装置にできるかどうかは、建物の用途、使用者、配管の状況などで決まり、読者が自分で判断できるものではありません。名古屋市の基準で確認できる考え方は、次のとおりです。
原則は「一敷地に1系統」
基準では、一敷地に複数の給水装置を設置すると配管形態が複雑になり、クロスコネクション(給水装置と給水装置以外の配管を直接つなぐこと)などの事故の危険性が大きくなるため、原則として一敷地には1系統の給水装置とされています。例外として、次の場合は別々の給水装置を設置できるとされています。
- 一敷地内に、用途または使用者の異なる複数の独立した建物が建築される場合は、建物ごとに別々の給水装置を設置できます。
- 一つの建物でも、用途または使用者が異なり、固定的な壁等で明確かつ独立的に区画され、主たる出入口が建物の外に面し、トイレ等の必要な機能を備えているなどの要件を満たす場合は、別々の給水装置を設置できます。ただし、上下水道局の維持管理上適当でない場合は除かれます。
離れの新築、増築、二世帯化などがどの形にあたるかは、個別の状況で変わるため、事業者と上下水道局に確認します。
支管分岐形態の対象建物と実施条件
道路取付管を共有して複数の給水装置を設ける支管分岐形態は、基準の中で特例として扱われています。対象建物として挙げられているのは、次のものです。
- 2階建以下の集合住宅(各戸が独立し、開放された通路に面していて、各戸に台所・トイレ・風呂等の独立した生活設備があること)
- 多世帯住宅および親子別棟住宅(各給水装置の使用者が異なり、各世帯に独立した生活設備があること)
- 私道に面した複数の敷地に給水するもの
実施条件として、基準には次の点が示されています。
支管分岐形態で基準が求めている主な条件
- 本栓(分岐元となる共有部分の管)は、公道に通じ、将来にわたって常時開放された通路等に布設すること
- 引込主管が、分岐する給水装置のすべてに対して十分な給水能力を持つこと
- 各戸のメータは、維持管理上支障のない地表に設置すること
- 給水装置全体を止水できる止水栓を、公私境界に近接した位置に設置すること
これらの条件を満たせるかどうかは、現地の配管や敷地の状況を見ないと判断できません。条件の細部や例外は基準の本文で確認が必要です。基準の本文は、給水工事施行基準 第1章 総則(PDF)で公開されています。
分岐の可否を自分で判断しないほうがよい理由
⚠️ 自分で分岐したり、他人の水道管につないだりしないでください
名古屋市は、市指定給水装置工事事業者以外が給水装置工事を行うと違反工事になると案内しています。また、給水装置と給水装置以外の配管を直接つなぐクロスコネクションは、水質への不安から水道法施行令で禁止されていると基準に記載されています。漏水の拡大や衛生上の問題につながるおそれがあるため、分岐は必ず市指定給水装置工事事業者に依頼してください。
申請の流れと依頼先|誰がどこに何を出すか
依頼先は市指定給水装置工事事業者です。上下水道局への申請は、事業者が申込者に代わって行います。
依頼先は市指定給水装置工事事業者
名古屋市上下水道局の「給水装置工事のお申し込み」によると、新設・改造・撤去の工事は市指定給水装置工事事業者に申し込みます。事業者は工事の施工に必要な調書を作成し、お客さまに代わって上下水道局に申請して承認を受けます。市指定給水装置工事事業者以外で工事を行った場合は違反工事になります。
市指定の事業者は、上下水道局の工事店検索で探せます。同ページには、工事代金は工事店によって異なるため複数の工事店から見積もりを取って納得してから契約すること、見積もりが有料の工事店もあるため事前に確認することが案内されています。
手続きの流れ
実際の段取りは工事内容によって変わります。名古屋市の案内と基準から読み取れる、おおまかな流れは次のとおりです。
基準では、指定工事事業者が行う計画段階の確認事項として、配水管の布設状況と水圧の調査、土地の範囲が不明確な場合の地籍図等による確認などが挙げられています。上下水道局が施工する範囲があることも、事前に確認しておきたい点です。
事前協議と窓口
基準では、申込みの際に所定の様式で事前協議が必要になる場合の一つに「多世帯住宅等条件付きの特殊なもの」が挙げられています。多世帯住宅で上下水道局のメータを複数設置する場合などが、これにあたるとされています。また、多世帯住宅で世帯ごとに給水装置を設置する場合は、誓約書(多世帯住宅)の提出が必要とされています。事前協議が必要かどうかは、指定工事事業者が基準に沿って確認します。
給水装置工事の受付窓口は、営業センターまたは給排水設備課です。上下水道局の案内では、給水装置工事のお申し込みに関する問い合わせ先として、営業センターまたは給排水設備課(電話 052-972-3647)が示されています。
承諾が関わる場面|既設管の所有者・土地の所有者に確認したいこと
承諾が必要かどうか、必要な場合にどの書類を出すかは、分岐元の管の所有関係と、管が通る土地の権利関係で変わります。一律に「必要」「不要」とは言えないため、工事の前に確認します。
名古屋市の様式に出てくる承諾・通知
名古屋市の給水工事施行基準の関係提出書類(PDF)には、承諾や通知に関する次のような様式が掲載されています。
- 支管分岐承諾について:本管から分岐するにあたり、本管の所有者の承諾を得たことを届ける書類です。様式には、分岐について紛争が生じたときは申込者が責任を持って解決する旨が記載されています。
- 土地使用承諾について:給水装置を設置するための私有地の使用について、土地所有者の承諾を得たことを届ける書類です。使用目的は給水装置の設置に限られ、修理や布設替えなど維持管理に必要な作業を妨げないことが様式に記載されています。
- 通知報告書:民法第213条の2に従い、他の土地や他人の給水装置の所有者と、その土地を現に使用している人に通知したことを報告する書類です。
「給水装置工事申込書(支管分岐工事用)」には、本管所有者の承諾を得て支管分岐承諾書を提出する欄と、民法第213条の2第3項の規定により通知して通知報告書を提出する欄が設けられています。また申込者は、工事や給水装置について利害関係人などの第三者から異議が出た場合は、申込者の責任で解決することを誓約する様式になっています。
承諾の要否は個別に確認し、権利関係で迷ったら法律の相談先へ
どの場合に承諾書が必須になるのかという要件そのものを明確に示した説明は、今回確認した公開情報の範囲では見つかりませんでした。そのため、分岐元の管を誰が所有しているか、管が通る土地の所有者や使用者は誰か、通知で足りるのかといった点は、工事前に指定工事事業者と上下水道局へ確認してください。他の自治体の取扱いを当てはめることもできません。
所有権、通行や使用の権利、隣地との合意といった法的な判断を伴う事柄は、この記事では結論を示せません。話し合いがまとまらない、トラブルになりそうだと感じる場合は、弁護士や司法書士などの専門家への相談を検討してください。新築時の引き込みでの隣地承諾の注意点は、新築水道工事で起きやすいトラブルと事前確認ポイント|引き込み・申請・隣地承諾の注意点でも整理しています。
分岐後の管理・修理は誰が担当するのか
名古屋市の基準では、給水装置は需要者(所有者側)が管理するものとされています。支管分岐形態では、原則として工事の申込者(所有者)が、工事完成後も給水装置を一括して維持管理します。
給水装置の管理は誰が担うか
基準には、水道事業者が管理するのは水道施設で、給水装置は含まれず、需要者が管理すると記載されています(水道法第3条第8項)。ただし名古屋市では、給水装置のうち公道下にある道路取付管の維持管理は上下水道局が代行します。需要者が給水装置の管理を著しく怠ったときは、給水を停止できると条例に定められています。
漏水などの修理は、上下水道局の案内で、市指定水道工事業者、修繕センター(フリーダイヤル 0120-227285)、お客さま受付センターへの申し込みとされています。
支管分岐形態の維持管理と、土地を分ける場合
支管分岐形態の本栓は、道路取付管から一番奥の支栓までを指します。この共有部分は将来にわたって維持管理していく必要があるため、基準では、原則として申込者(所有者)が一括して維持管理することとされています。あわせて、次の点が示されています。
- 本栓を布設した通路等が公道に認定された場合、給水装置の所有者は「給水管移管申込書」を提出します。
- 通路等の所有権を分割する場合は、給水管(本栓)の管理者を選定します。
- やむを得ず所有権を移転する場合は、支管分岐形態の各要件を引き継ぎ、将来にわたって維持管理に支障が出ないようにします。
土地の分割を伴う場合は、分けた後に誰が本栓を管理するのかを、工事の前に整理しておく必要があります。
給水装置の所有者が変わるとき
給水装置の所有者が変わる場合は、上下水道局のよくあるご質問で、「給水装置所有者変更届」を担当の営業センターへ提出する手続きが案内されています。指定工事店を通じて新設・改造を申し込んでいる場合は、この手続きは済んでいます。この届では、水道の使用開始・中止や使用者名義の変更、土地や建物の所有権の変更はできません。
費用が変わる要因と見積もりの確認点
公的機関が示す分岐工事の標準的な金額は、今回確認できませんでした。費用は現地調査にもとづく書面の見積もりで確認します。名古屋市の資料で金額を確認できるのは、手数料などの一部です。
名古屋市の案内で確認できる費用
指定工事事業者が上下水道局へ申請する際には、設計審査手数料(非課税)が必要です。調査・測量・調書審査にかかる費用で、いったん納入すると申し込みを取り消しても返金されません。口径別の金額は次のとおりです。
| 口径 | 設計審査手数料(1件につき) |
|---|---|
| 13ミリ | 2,400円 |
| 20ミリ・25ミリ | 4,800円 |
| 40ミリ・50ミリ | 14,500円 |
| 75ミリ | 36,000円 |
100ミリ以上は省略しています。金額は変更される場合があるため、最新の内容は上下水道局の案内で確認してください。このほか、新設や口径を大きくする改造では、口径に応じた基本工事費が必要になると案内されています。分岐工事で基本工事費がかかるかどうかは、工事の種別によって変わるため、事業者と上下水道局に確認が必要です。費用項目の見方は、名古屋市の水道引き込み工事費用|設計審査手数料・基本工事費・精算の見方でも整理しています。
費用が変わる主な要因
見積もりの金額は、主に次の点で変わります。
- 分岐元から分岐先までの管の長さ
- 管の口径
- 掘削が必要な範囲と、舗装や地面の復旧の範囲
- 上下水道局への手数料や費用
- 承諾や通知に関する書類の確認・作成を、誰がどこまで行うか
これらは見積もりの内訳を確認する視点であり、名古屋市が金額を定めているのは前述の手数料などの一部です。同じ工事でも、現地の状況によって金額は変わります。
見積書で確認したい点
見積書・契約前のチェックリスト
- 市指定給水装置工事事業者であるか
- 「分岐」「取り出し」「引き込み」などの呼び方に関わらず、どこからどこまでの工事かが書面で分かるか
- 上下水道局へ支払う手数料や費用が、見積もりに含まれているか、別途か
- 掘削・復旧の範囲と、その内訳
- 追加費用が発生する条件、出張費、夜間・休日の料金の有無
- 契約後に取り消す場合の費用(キャンセル料)の有無
- 承諾や通知に関する書類を、誰がどこまで準備するか
- 工事後の保証と、不具合があったときの連絡先
料金の安さだけで決めず、工事の範囲、説明の分かりやすさ、保証の内容もあわせて比べます。複数の事業者から見積もりを取ると、内訳の違いに気づきやすくなります。
よくある質問(FAQ)
分岐工事と引き込み工事は何が違いますか?
起点と担当が違います。引き込み工事は道路下の水道本管から宅地までの工事で、名古屋市では上下水道局が行います。分岐工事は既設の給水管から分けて水を引く工事で、宅地内の給水装置工事は市指定給水装置工事事業者が施工します。
自分で水道管を分岐してもよいですか?
避けてください。名古屋市は、市指定給水装置工事事業者以外が給水装置工事を行うと違反工事になると案内しています。分岐の可否や必要な手続きも、指定工事事業者と上下水道局に確認する必要があります。
分岐工事に承諾書は必ず必要ですか?
一律に必要とも不要とも言えません。名古屋市の様式には、本管所有者の承諾を届ける書類、土地所有者の承諾を届ける書類、民法第213条の2にもとづく通知の報告書があり、どれが必要になるかは状況で変わります。工事前に指定工事事業者と上下水道局へ確認してください。
分岐工事の費用はいくらくらいですか?
公的機関が示す標準的な金額は確認できていません。管の長さ、口径、掘削・復旧の範囲、手数料などで変わるため、現地調査にもとづく書面の見積もりで確認します。名古屋市の案内で確認できる設計審査手数料は、13ミリで1件につき2,400円、20ミリ・25ミリで4,800円です。
土地を分けたあと、共有している水道管は誰が管理しますか?
支管分岐形態では、通路等の所有権を分割する場合に給水管(本栓)の管理者を選定すると、名古屋市の基準に記載されています。やむを得ず所有権を移転する場合も、各要件を引き継ぎ、維持管理に支障が出ないようにします。具体的な取り決めは、工事前に指定工事事業者と上下水道局へ確認してください。
まとめ:水道管の分岐工事・取り出し工事の確認点
水道管の分岐工事・取り出し工事は、市指定給水装置工事事業者に依頼し、事業者が上下水道局へ申請して進めます。分岐できるかどうか、承諾が必要かどうか、費用がいくらかは、現地の状況と権利関係で変わるため、工事前の確認が欠かせません。
- 依頼先:市指定給水装置工事事業者。それ以外が行う工事は違反工事になります。
- 承諾:本管所有者の承諾、土地所有者の承諾、民法にもとづく通知など、必要な書類は状況で変わります。
- 管理:支管分岐形態では、原則として申込者(所有者)が工事完成後も一括して維持管理します。
- 費用:標準的な金額は確認できないため、書面の見積もりで工事範囲と内訳を確認します。
まずは、分岐したい理由、建物の用途、使用者、管や土地の権利関係を整理して、市指定給水装置工事事業者と上下水道局に確認してください。

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