テナントで水漏れ・排水つまりが起きたら|連絡の順番と費用負担の確認手順

テナントで水漏れ・排水つまりが起きたら|連絡の順番と費用負担の確認手順

テナント(店舗・事務所)で水漏れや排水つまりが起きたら、まず止水と安全確保で被害の拡大を止め、状況を写真や動画で記録したうえで、賃貸借契約書の緊急連絡先を確認して管理会社またはオーナーへ速やかに連絡するのが基本です。修繕費用の負担は、契約書の修繕・管理条項、民法の一般ルール、原因の区分をあわせて確認する必要があり、自己判断で決めないことが大切です。

  • 最初の行動(止水・安全確保・記録)と、連絡の順番の目安
  • 費用負担を考えるときの確認先(契約書・民法・原因の区分)
  • 階下や隣の区画に被害が出たとき、営業を止めたときの動き方

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の費用負担や責任の有無を判断するものではありません。結論は賃貸借契約書の内容や原因、状況によって変わります。公的機関の情報は2026年10月時点で確認した内容に基づくため、最新の情報や個別の判断は、管理会社・オーナー、名古屋市上下水道局、保険会社、弁護士などにご確認ください。


最初にやること:止水・被害拡大の防止・記録

最初にやることは、水を止めて被害を広げないこと、安全を確保すること、状況を記録することの3つです。原因や費用負担の話は、この3つを済ませてから進めます。

止水と安全の確保

水が噴き出している、床に広がっているなど、水漏れが続いている場合は、止水栓や元栓を閉めて水の流出を止めます。止水栓や元栓の閉め方は、水漏れ発生時の対処法|止水栓・元栓の閉め方と修理業者の選び方も参考にしてください。

テナントが入る建物では、止水栓や元栓が共用部分にあり、借主が触れない場合があります。場所が分からない、閉められないときは、探し回らずに管理会社やオーナーへ連絡して指示を受けます。水がコンセントや電気機器の近くに及んでいるときは、感電のおそれがあるため、濡れた機器や配線には触れないでください。

排水のつまりや逆流が疑われるときは、さらに水を流さないようにします。汚水が出ている場合は直接触れず、配管の分解などの修理は行わないでください。

写真・動画で状況を記録する

後で原因の確認、保険の手続き、費用負担の話し合いをするときに、発生直後の記録が役立ちます。片付けや拭き取りの前に、次の内容を残しておきます。

最初に残しておく記録

  • 気づいた日時と、そのときの状況(どこから、どのように水が出ていたか)
  • 漏れている場所と、水の広がりが分かる写真・動画
  • 濡れた床・壁・天井・設備・商品・什器などの状態
  • 階下や隣接する区画への影響の有無
  • 止水した時刻と、連絡した相手・時刻・伝えた内容のメモ

連絡の前にやってはいけないこと

⚠️ 自己判断で進めないこと

管理会社やオーナーに連絡する前に、配管の交換や大がかりな工事を発注しないでください。契約書に、修繕を行う前の事前の連絡や承諾、業者の指定が定められていることがあります。また、費用負担や賠償について、その場で「負担します」「支払います」と約束することも避けてください。原因の調査結果や契約、保険の内容によって判断が変わるためです。

連絡の順番:管理会社・オーナー・水道局・業者・保険会社

連絡の順番は、止水と安全確保の次に、契約書で定められた窓口である管理会社またはオーナーへ連絡し、そのうえで水道工事業者、保険会社の順に進めるのが目安です。建物の契約形態によって窓口が異なるため、契約書で確認してください。

連絡の順番の目安

民法第615条は、賃借物が修繕を要するときに、賃借人が遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならないと定めています(賃貸人がすでに知っている場合を除きます)。条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。通知を遅らせないことが、連絡の順番を考えるうえでの基本になります。

ステップ1:止水栓を閉める、危険がないか確認する、状況を写真・動画で記録する
↓
ステップ2:賃貸借契約書の緊急連絡先と修繕条項を確認し、管理会社(またはオーナー)へ速やかに連絡する
↓
ステップ3:管理会社・オーナーの指示を確認し、水道工事業者に現地確認を依頼する(指定業者の有無を先に確認)
↓
ステップ4:保険証券・約款を確認し、保険会社・代理店へ連絡する
↓
ステップ5:階下・隣接区画への影響があれば管理会社を通じて共有し、水道料金の請求先が不明なら水道局へ確認する

緊急性が高い場合(水が止まらない、階下へ漏れている、汚水が逆流しているなど)は、管理会社の緊急連絡先と水道工事業者への連絡を並行して進めることになります。その場合も、誰に何を伝えたかをメモしておきます。

連絡先ごとに伝える内容

連絡先によって、連絡する理由と伝える内容が異なります。

連絡先連絡する理由伝える内容
管理会社・オーナー契約上の修繕・対応の窓口を確認し、通知を済ませるため発生日時、場所、止水の有無、被害の範囲、写真・動画
水道工事業者原因の確認と、応急対応・修理の見積もりのため症状(漏れ・つまり・逆流)、建物名と区画、止水済みか、作業前に見積もりと作業内容の説明を希望すること
名古屋市上下水道局水道の契約者や料金の扱い、公共側の排水との切り分けを確認するため使用場所、契約者の名義、漏れた場所の状況
保険会社・代理店補償の対象になるか、手続きの流れを確認するため保険証券の内容、事故の状況、被害の写真

補償の範囲は保険契約ごとに異なります。保険会社の案内に従い、修理を始める前に連絡が必要かどうかも確認してください。

オーナー・管理会社の担当者が連絡を受けたとき

借主から連絡を受けた側も、連絡を受けた日時と内容を記録し、賃貸借契約書の修繕・管理条項と緊急時の対応を確認します。借主が自分で業者を手配している場合は、費用の請求先や指定業者の有無を早めにすり合わせておくと、後の食い違いを減らせます。

修繕費用の負担は契約書・民法・原因の区分で確認する

オーナーと借主のどちらが負担するかは、一つの答えに決まるものではありません。賃貸借契約書の定め、民法の一般ルール、水漏れや排水つまりの原因の3つを順に確認して考えます。

まず賃貸借契約書の修繕・管理条項を見る

事業用の賃貸借では、契約書の特約で修繕の範囲や負担者が細かく定められていることがあります。条項は次の点に注目して確認してください。

契約書で確認する条項の例

  • 修繕の範囲と、貸主・借主それぞれの負担の定め
  • 借主の負担とされる小規模な修繕や、設備の維持管理の定め
  • 緊急時の連絡先と、修繕前の通知・承諾の手順
  • 業者の指定や、工事を行える者の定め
  • 設備の所有区分(建物付属の設備か、借主が設置した設備か)
  • 借主の保険加入義務や、損害賠償に関する定め
  • 営業への影響(営業損害)に関する免責や特約

民法の一般ルールを知っておく

民法第606条第1項は、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になったときは、この限りではないとされています。

東京都住宅政策本部の資料でも、この考え方が賃貸人の修繕義務と賃借人の責めに帰すべき事由の場合として整理されており、修繕義務は契約上の使用目的(住居・事務所・店舗など)に応じた使用をさせる義務と関連づけて説明されています(東京都「賃貸物件の修繕及び原状回復に関するトラブルについて」)。

このほか民法には、賃借人が賃貸人に修繕の必要を通知したのに相当の期間内に修繕されない場合や、急迫の事情がある場合に、賃借人が修繕できること(第607条の2)、賃貸人の負担に属する必要費を支出したときの償還請求(第608条第1項)の定めもあります。ただし、どの費用が賃貸人の負担にあたるかは、契約書の定めや事情によって変わります。先に管理会社へ連絡せず、高額な工事を発注することは避けてください。

なお、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民間賃貸住宅を対象とした参考資料です。事業用の店舗にそのまま当てはまるとは限らないため、店舗の負担は賃貸借契約書の内容によって確認する必要があります(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。

原因の区分で確認する観点

原因が何かによって、確認する先や条項が変わります。次の表は結論を示すものではなく、確認の観点を整理したものです。

原因の例確認すること主な確認先
設備や配管の経年劣化・故障が疑われる対象の設備が修繕条項の範囲か、専有部分か共用部分か契約書、管理会社・オーナー
借主の使い方(異物や油の排水など)が関わる可能性がある業者による原因の調査結果、使用状況、使用方法に関する条項水道工事業者の報告、契約書
建物の共用部分や他の区画が原因の可能性があるどの配管・設備か、誰が管理しているか管理会社・オーナー
原因がすぐに分からない原因調査の依頼先と、調査費用の扱い管理会社・オーナーに先に確認

原因は、現場の状況と業者の調査結果で判断が分かれることがあります。調査報告書や見積書などの書面をもらっておくと、後の話し合いに役立ちます。

⚠️ 負担を自己判断しないでください

契約書に特約がある場合は、その内容がどのような場合に適用されるかの判断が必要です。負担の割合や責任の有無で意見が分かれるときは、管理会社・オーナーとの協議に加え、弁護士などへの相談も検討してください。

名古屋市の場合:水道料金と排水設備の確認先

名古屋市で営業している場合は、水道料金の請求先と、排水設備の管理者が誰かを、名古屋市上下水道局の案内と契約書の両方で確認します。

水道の契約者と漏れた水の料金

名古屋市上下水道局の案内では、敷地内の水道設備はお客さま(契約者)の管理とされ、修理費と漏れた水に対する上下水道料金は利用者の負担と説明されています。テナントが入る建物では、水道の契約者がオーナー・管理会社なのか借主なのか、料金が賃料や共益費に含まれるのか個別に請求されるのかが建物によって異なります。契約書と、実際の請求書の名義を確認し、不明な場合は上下水道局に確認してください。

料金の減額の条件

同じ案内では、水漏れの箇所や状況によっては料金を減額できる場合があるとされています。

対象は、上下水道局または市指定水道工事業者が修理した場合で、完了を証明する書類(市指定水道工事業者が修理したときは「給水装置修繕届出書」、上下水道局が修理したときは「修繕工費領収書」)の提出が必要です。トイレでの水漏れや、ビル・マンションの受水槽より先での水漏れなどは、減額の対象外として案内されています(名古屋市上下水道局「水漏れした場合の上下水道料金」、2025年2月更新)。

減額の確認ポイントは、水漏れで水道料金が高くなったら?名古屋市の漏水時料金・減額確認ポイントでも整理しています。テナントでは、修理の依頼先を決める前に、管理会社・オーナーと水道料金の請求先を確認しておくと安心です。

排水つまり・逆流の管理者

名古屋市上下水道局の案内では、敷地内で排水がつまっている場合、アパート・マンションなどは住宅の管理者(管理人または管理会社など)が管理しているため、そちらへ連絡する流れが示されています。それ以外の一戸建てなどでは、市指定排水設備工事店への申し込みが案内され、修理費用はお客さま負担とされています。見積もりを確認して納得してから契約するよう勧められています(名古屋市上下水道局「よくあるご質問」)。

テナントビルで排水がつまった場合も、どこまでが専有部分でどこからが共用の配管かは建物によって異なります。道路側の排水との切り分けが分からない場合は、上下水道局の担当窓口に確認します。

階下・隣の区画への被害と営業停止時の動き方

階下や隣の区画に被害が出たときは、被害を広げない行動と記録を優先し、責任や賠償額の話は管理会社・保険会社を通じて、原因が分かってから進めます。

階下・隣接区画に水が及んだとき

被害の範囲を写真や動画で記録し、管理会社へすぐ連絡して、被害を受けた区画への連絡方法を確認します。責任の有無や賠償額は、原因の調査結果、契約書、保険の内容によって変わります。その場で支払いや負担を約束せず、保険会社・代理店へ連絡して手続きの流れを確認してください。

営業を止めた間の損害と保険の確認

営業を止めた間の売上の減少や商品の損害を誰が負担するかは、契約書の条項、保険の内容、個別の事情で判断が分かれるため、この記事では結論を示しません。公的機関の資料では、事業用賃貸借における営業損害の扱いを今回確認できていません。契約書の営業損害に関する条項と、保険証券・約款を確認し、保険会社・代理店に連絡してください。判断が分かれるときは弁護士に相談します。

店舗総合保険や施設賠償責任保険など、事業者向けの保険の補償範囲は契約ごとに異なります。火災保険の水漏れの扱いは、火災保険は水道工事の水漏れに使える?対象になる条件と確認の流れで確認の流れを整理しています。

営業再開前に関係機関へ確認すること

飲食店など営業許可が必要な業種では、水漏れや排水の逆流が営業の再開や設備の要件に影響するかどうかが、業種と被害の程度によって変わります。影響の有無を自己判断せず、管轄の保健所や消防署など関係機関に確認してください。

水道工事業者を手配するときの見積もり確認点

業者を手配するときは、料金の安さだけで決めず、見積書、作業内容、追加費用、キャンセル料、出張費、夜間料金を依頼前に確認します。管理会社の指定業者がないかも、先に確認してください。

依頼前に確認する項目

業者に確認する項目

  • 見積書の有無と、見積もり・出張が有料か無料か
  • 作業内容と、追加費用が発生する条件
  • キャンセル料の有無と、発生する時期
  • 出張費・夜間料金・緊急対応の割増の有無
  • 市指定の水道工事業者・排水設備工事店かどうか(名古屋市の場合)
  • 保証の有無と、作業後の報告書・領収書の発行

急がされたときの対応と相談先

国民生活センターは、水漏れ修理などの「暮らしのレスキューサービス」で、見積もり無料のはずが見積もり費用を請求される、見積もりのつもりで呼んだ業者にその場で高額な契約を急がされるといったトラブルが寄せられていると注意を呼びかけています。

広告や電話で示された料金を鵜呑みにせず、複数社から見積もりを取り、納得できなければ断ること、トラブルになったら消費生活センター等や消費者ホットライン188に相談することがアドバイスされています(国民生活センター「暮らしのレスキューサービスでのトラブルにご注意」)。

緊急時でも、契約をその場で急がされた場合は、管理会社に確認するなど一度立ち止まる時間を作ることが大切です。

よくある質問(FAQ)

テナントで水漏れが起きたら、最初に誰に連絡すればよいですか?

止水と安全確保をしたうえで、賃貸借契約書の緊急連絡先を確認し、管理会社またはオーナーへ速やかに連絡するのが基本です。止水栓が共用部分にあって閉められない場合や、水が止まらない場合は、管理会社の緊急連絡先や水道工事業者への連絡を並行して進めます。

修理費用は、オーナーと借主のどちらが負担しますか?

一概には決まらず、賃貸借契約書の修繕・管理条項、民法の一般ルール、原因の区分をあわせて確認する必要があります。民法第606条第1項は賃貸人の修繕義務を定めていますが、事業用の賃貸借では契約書の特約で負担が定められていることもあります。負担を自己判断せず、契約書と管理会社・オーナーに確認し、必要に応じて弁護士へ相談してください。

原因が老朽化か、借主の使い方かで、負担は変わりますか?

変わる可能性があります。民法第606条第1項のただし書きは、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になったときは、賃貸人の修繕義務の対象外となる場合があることを示しています。ただし、原因をどう判断するかは業者の調査結果や契約内容によって変わるため、調査報告書や見積書などの書面を残して確認してください。

階下の店舗や隣の区画に被害が出たら、どうすればよいですか?

被害の範囲を写真や動画で記録し、管理会社へすぐ連絡して、被害を受けた区画への連絡方法を確認します。責任の有無や賠償額は原因と契約、保険の内容で変わるため、その場で支払いを約束せず、保険会社・代理店にも連絡して手続きを確認してください。

営業を止めた間の損害や保険は、どう確認すればよいですか?

契約書の営業損害に関する条項と、保険証券・約款を確認し、保険会社・代理店に連絡します。保険の補償範囲は契約ごとに異なり、営業を止めた間の損害の扱いも契約や事情で判断が分かれるため、判断に迷う場合は弁護士に相談してください。

まとめ:テナントの水漏れ・排水つまりは記録と連絡、費用負担は確認から

テナントで水漏れや排水つまりが起きたときは、止水と安全確保で被害の拡大を止め、記録を残したうえで、契約書の窓口に従って管理会社・オーナーへ速やかに連絡するのが基本です。費用負担は、契約書の条項、民法の一般ルール、原因の区分を順に確認して考えます。

  • 最初の行動:止水、感電や汚水への注意、発生直後の写真・動画の記録
  • 連絡の順番:管理会社・オーナー、水道工事業者、保険会社の順が目安。水道料金や排水の切り分けは水道局に確認
  • 費用負担:契約書の修繕・管理条項、民法第606条第1項の一般ルール、原因の区分を確認し、自己判断しない
  • 被害が広がったとき:階下や隣の区画の記録、保険証券・約款の確認、営業再開前の関係機関への確認

まずは賃貸借契約書の修繕・管理条項と緊急連絡先、加入している保険証券を手元に用意し、管理会社・オーナーへ連絡する準備をしてください。

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